永田 雅一 (ながた まさかず)富士山フォレストトレック 代表

“豊かな森が作る豊かな海” 森を歩き、触り、見て、聞いて、それを体感しましょう。

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ツアーガイドの永田雅一は、海洋ジャーナリストとして写真家として世界78か国の森と海を撮影し、調査してきました。

その活動を通して確信したのは「陸上に豊かな森があるところは必ずその沖合に豊かな海がある」ということです。ミクロネシアのパラオ共和国では海洋研究所を設けて20年以上にわたってマングローブが育む豊かな海を見つめてきました。オーストラリア東海岸では13年間ザトウクジラの生態調査を行いました。アメリカ西海岸では巨大海藻ジャイアントケルプの森を調査しました。北極海や南極海では地球温暖化に伴う環境の変化を見てきました。

富士山のふもと、生まれ故郷である富士宮市に帰ってからは富士山が作り出す湧き水と河川、裾野に広がる森の役割について調べてきました。

日本一高い山の前に広がる日本一深い湾、駿河湾。そこはサクラエビやシラスなどの特産品をはじめとする多くの水産資源、浅瀬から深海に至るまで多種多様な生物で溢れる海です。その豊かさの源は何だろうと考えたとき、湾を取り囲む山々から流れ出ている河川が湾にとって大切な栄養を運んでいることが大きな要因の一つであると確信しました。

私たちがいつまでもおいしい海の幸をいただくことができるためにはどうすればいいでしょう。

そのためには湾とその周辺に広がる豊かな自然を守ることです。これまで駿河湾の水中撮影を何度も行い、富士山を中心とする周辺環境を写真撮影、映像撮影してメディアに訴えてきました。講演活動も全国規模で行ってきました。湧き水が作る河川として知られる地元の芝川や神田川では小学生の子供たちがいる親子を対象に生物の観察会を何度も行ってきました。冷たくてきれいな湧き水を手足に感じ、水生昆虫などのか弱い生物を観察し、その生きざまを見てもらうことで、川とそこに暮らす命、そして周辺の森の役割を知ってもらうことができました。それを忘れずに大人になってくれることを願っています。「芝川の生物観察会」は、小学校のクラス単位で夏場に実施しています。

「富士山の森トレッキング」は標高1250ｍから1293mにかけて広がる西臼塚の森を約1時間半かけて巡ります。

その間に代表的な樹木、草花など約30種類について、その特徴、名前の由来、古代からの利用などについて説明します。実際に手で触れ、匂いをかぎ、植物が作り出している空間に身を置くことは、インターネットなどで得る知識とは全く別で、知る喜びと満足を得ることができます。

途中、噴火で焼け野原になった山を復活させたコケの役割や富士山に降る雨や雪解け水の行方などについても解説し、なぜ落葉樹は紅葉して葉を落とすのかなども休憩時間を利用して分かりやすく話します。いま自分たちがいる森の栄養が駿河湾を豊かにしているのだと、だれもが深く感じてくれることができるのです。

そして、トレッキングの最後にお願いしているのは「地球温暖化防止のために一人一人が努力してほしい」ということです。

日本列島で最も崩落が激しい場所、それは富士山の大沢崩れです。一年間で10ｔトラック30,000台分も崩れています。かつては夏場でも富士山の八合目までは永久凍土で覆われていました。しかし、いま、夏場の永久凍土は九合目までいかないとありません。地球温暖化によって永久凍土が解け、地盤のゆるみが生じて大沢崩れの崩壊速度が増しているのです。

3,776ｍの美しい山を守るために私たちにできることは何か、少しでも考えてほしいと願いながらトレッキングを行っています。